ニューヨークの地下鉄にひそむ意外なルールとパフォーマーたち

TOEICは海外の生活事情を知っていると、それだけで素早く回答へ導けるケースが多い。本設問では、UUTSと呼ばれる組織と利用者との衝突を経て、折り合いを付けていくという海外ならではの状況を説明している。

公共交通機関とTOEICテスト
公共交通機関と設問

出所:TOEICテスト完全攻略リーディング10回模試解説付き(学研教育出版)

ロンドン、パリ、ニューヨーク、東京のような大都市では、古くから地下鉄網が張り巡らされており多くの人々の生活の足となっている。近年は環境に与える影響などもあり公共交通(Mass Transit)が見直され、車社会ともいわれる国土の広いアメリカ、とりわけロサンゼルスなどでも地下鉄網が整備されているのである。

そんな公共交通を管理する会社といえば、日本ではJRや営団地下鉄というイメージかもしれないが、アメリカをはじめ諸外国では大抵設問にあるような半民半官の運営管理会社が存在するのが常である。ニューヨークでも鉄道管理会社は多くの雇用をもたらし、そのためにストライキが発生することもあるのだが、庶民の足としての機能を維持しているのである。

本記事では、筆者も長く暮らしていたニューヨーク市の事情について紹介してみたい。

地下鉄の乗車料金の値上げで発生するデモは、もはや風物詩

ニューヨーク市の地下鉄は24時間稼働しており、どこまで乗っても均一料金だ。これが少々遠い郊外からでも多くの労働力が都心に集まってくる手助けになる。それゆえ数年に一度の料金改定時になると、FARE HIKEと呼ばれ街ではプラカードを持ちデモ運動が起きるほどの反対運動が起こり、今やニューヨークの風物詩とも言える。
(ニューヨーク市の運賃は、2018年現在2ドル50セントである。)

今ではメトロカードと呼ばれるプリペイドの磁気カード(テレホンカードのような簡易的な物)で運賃を支払うが、その昔はトークンと呼ばれる代用硬貨をまとめ買いしてそれを改札に投入、回転ドアで入場していた。今も昔も変造硬貨や変造カードを持ち入場口の前に立ち、安価な運賃で入場させる犯罪は後を絶たない。これは日本と違い出口にてカードを再通過させない仕組みがあるから可能なのだが、乗せる方も乗る方も犯罪なのは言うまでもない。

また当時の車両といえば映像では見たことある方もいるかもしれないが、落書きだらけの電車が有名であった。当局も除去作業が追い付かず、無理やり風物詩と言わんばかりに強行に走らせていたが、90年代から徐々に綺麗な日本製の車両が導入されており、なんとこの車両の表面はスプレーなどを吹いても塗料が乗らず簡単に落ちてしまうという技術が施されている。昨今、ニューヨークで観光された方は、綺麗な地下鉄の車両をご存知だろう。

日本の電車の様子と最も違う点といえば、車両などのハードよりも、やはり乗客の人間模様ではないだろうか。

人種のるつぼと言われるニューヨークでは車両の中でもおしゃべりがワイワイガヤガヤだが、隣の車両から現れてくるストリートパフォーマーのダンサーやミュージシャン、ひとしきりダンスを見せては、被っていたキャップを逆さに皆さんにおひねりをねだるなんて光景もまま見られる。

客だけではなく時にはヤンキースの大ファンの車掌がゲームに勝つと上機嫌でマイクパフォーマンスさながらのアナウンスで次駅を紹介することも。

こんな一見自由に見えるニューヨークの地下鉄も実はルールに関しては案外厳しく日本よりも明確だ。

日本よりも厳しいニューヨークの地下鉄の規則とは?

まず物乞いの禁止。他の乗客にお金品をせびることは無論禁止となる。そして意外なのが飲酒。日本では仕事帰りに缶チューハイを一杯、なんて方も見受けられるが、ニューヨークでは警官や車掌にみつかると違反切符を切られ、高額な罰金の対象になる。

そして極めつけは横になることだ。夜遅く酔客がつい長椅子に横になって、という光景を日本ではたまに見るが、座席でどんなにつらくても横になって寝ることは禁じられている。そのため座席は何とプラスチック製で座り心地が悪くしてある。24時間走るため、そこを住処としないホームレス対策ともいえるが、同じ料金を払っている乗客にはおなじだけの座席配分を、独り占めは許さないというアメリカらしいフェアな精神も見え隠れする。

ルールを定めるだけでなく、これらを取り締まるためにトランジットポリス(Transit Police)と呼ばれる警官が車内を常にパトロールしており市民の安全を維持しているのだ。

そしてこういった取り決めやメンテを一手に任されているのが、ニューヨークではMTA(Metro Transit Authority)メトロ・トランジット・オーソリーティ、上記設問のUUTSのような組織だ。

彼らは定期的に利用希望者の多い路線の改定なども担当しており、只今ニューヨーク市では2番街の路線が10年越しの計画で昨年一部開業にこぎつけたばかりである。

より便利に、より安全にというのはどの国でも同じだが、それぞれのやり方に国民性が現れている事をみてみるとこれも面白い。

この設問からそんなことに思いを馳せてみてはいかがだろうか?