TOEICの設問には下記のような不動産屋の家さがしに関する場面の問題がしばしば出題される。下記は典型的な不動産広告の一文だ。
日本と違って海外に住んだことがない方には、現地での家探しや住宅事情の絵が浮かんでこないというのもTOEICの問題を難しく感じさせてしまう要因ではないだろうか?
不動産英語の攻略1. アメリカの不動産は寝室の数で表記する
まず設問の下に出ているアパートのサイズ、日本では1Kや1DK、2LDKなどの略語で表されるが、アメリカなどでは1BR、2BRというように寝室の数であらわされる。
キッチンとリビングについてはあるのが当たり前という前提だろうか。ちなみに日本でいうワンルームは、STUDIO(ストゥーディオ=スタジオ)と表記される。ダンススタジオのように仕切りがない部屋という意味である。
設問の物件はまず、デイビル・スイーツと名がついている辺り、また25階建てで200世帯も擁することから都市部によくあるタワーマンションだと推測できる。
近年日本のタワーマンションも名がついていることが多いがこれはアメリカでも同じだ。家賃も全米一高いマンハッタンほどではないが、1BRが1,000ドル(これは月額)と比較的高額なので、そこそこの高級物件であると伺える(Suitesとは部屋の意味、階層はフロアーでなくStoryと言われ、同音異義語に惑わされないように注意が必要だ)。
そうなるといわゆるアメニティー、ビルについている付加サービスとして、本問題にも登場する住民専用のプールやジムといったものがテナント全員に無料で提供されていると書かれている。
一見豪華なサービスにも見えるが、これは案外典型的なケースで、運動好きのアメリカ人気質と、治安の悪いエリアにあるジム行く危険性、またフィットネス業界は入退会の違約金問題などでかつてアメリカでは大きな社会問題に発展したことなどの背景もあり、マンションに備え付けならばそういうトラブルを回避できる。また著名人はプライバシーも守られるといった二重、三重の付加価値があるというので歓迎されている向きがあるのだ。
不動産英語の攻略2. アセットマネジメントで資産価値を高める
ちなみにマンション投資は日本より盛んで、大手デベロッパーのみならず 、個人投資家も、設問にあるように1階(グランドフロアーと表記)にはレストランや24時間営業のスーパーを誘致するなどしてビルの価値を高める努力に余念がない。
地震の耐震改装の必要性などにより築年数とともに劣化し、価値が下落する日本の物件と事情が違い、地震もなくビルをメンテナンス、改装していくことでその資産価値を高め地価や賃料を保ち、上げていくといった技法は、アセットマネジメントと呼ばれ当地の不動産投資技法として確立されているのだ。
そのうえで向こうの不動産業界では、LOCATION LOCATION LOCATIONという標語がある。(不動産広告の殺し文句にもよく登場する)
建物の質は改装できるので、不動産の本来の価値は すべて立地がものを言うのだ、という意味である。いくら良いアメニティーがあっても場所がすべて、
新しいもの好きの東京と違い、古いビルでもそのエリアの一番いい場所にあることが多く、案外根強い人気があるものである。
不動産英語の攻略3. 所有者であるオーナーの権限が住人より圧倒的に強い
ちなみに、設問で出てくるUPFRONTという表現は不動産業界ではしばしば使われる。
前払いという意味だが、いつも家賃の取りっぱくれを気にしなければならない家主業には歓迎されるのだ。不動産投資に付きまとうリスクはなんといっても家賃の未回収で、頭を悩ませるのは日本と同じだが、住人であるテナントより所有者であるオーナーの法的権限のほうが圧倒的に強い、というのは余談だがアメリカの不動産業界で特筆すべきであろう。アメリカではストレートにものを考え、部屋は借主のものではなくあくまで持ち主の物件だと示唆している。
上記の家賃から推測すると1BRが少なくとも2,000ドル近くするマンハッタンより少しばかり安いが地方に行けば600から700ドル程度と考えれば、アメリカでもそこそこの高級地、ロサンゼルスやシアトル、はたまたホノルルあたりを想像してしまう。そんなことに思いを馳せ、逆にTOEICの問題を通じ向こうのライフスタイルを伺い知ってゆくチャンスと思いながら問題を解けば、TOEIC学習も何倍も楽しくなるのではないだろうか?